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次に、高山参考人にお願いいたします。
○高山参考人 高山でございます。
本日は、衆議院厚生労働委員会にお招きくださいまして、まことにありがとうございます。参考人として年金関連法案に意見を申し述べ得る機会をちょうだいいたしましたこと、大変光栄に存じます。
以下、十一点にわたり意見を申し述べます。
一。日本の公的年金は、二〇〇〇年三月末の段階で約六百兆円の債務超過となっておりました。この債務超過は、既に政府が支払い約束をした年金給付のうち、財源が手当てされない金額でございます。この債務超過の圧縮問題、すなわち、六百兆円の追加資金をだれが、いつ、どのように負担するかという問題こそが、今回の年金改革における主要テーマにほかなりません。この問題を、以下、問題一と呼びます。求められているのは負担の構造改革でございます。
二。他方、公的年金制度への信頼は、今、かつてないほど揺らいでおります。年金制度に対する信頼をどのように取り戻すかという問題について的確に回答を与えることも、今回における年金改革の重要なテーマでございます。以下、この問題を問題二と呼びます。
三。政府提出の改正法案は、問題一について、1年金保険料の引き上げ、2国庫負担の引き上げ、3給付水準の実質的引き下げの三つによって債務超過を圧縮、解消しようとしております。これからの十五年間、毎年一兆五千億前後の定期的な年金負担増計画となっております。
政府案が実現いたしますと、企業は従来よりも一段と厳しいリストラを強行せざるを得なくなります。また、その結果、厚生年金の空洞化が一層進み、多数の若者が労働力市場から締め出されてしまいます。現役労働者の手取り所得は伸び悩み、消費支出も低迷してしまいます。失業率は上昇し、結果として経済成長が阻害されてしまいます。さらに、若者にとっては年金負担の方が年金給付よりも大きくなるおそれが強く、若者の年金不信を取り除くことはできません。
四。既に年金を受給しているお年寄りの年金給付も、これから二十年近くにわたって実質目減りが続きます。政府シナリオの基準ケースを想定しますと、モデル年金受給世帯の年金水準は五〇%台から四〇%強まで低下いたします。給付水準の五〇%保証は既裁定年金にはございません。詳細はお手元の図の一と二をごらんになっていただきたいと思います。
五。政府案は保険料水準固定方式と呼ばれておりますけれども、同時に給付水準固定方式という性格を兼ね備えております。この二つの約束を同時に守ることは容易ではありません。将来シナリオが狂うということはよくあることでございますが、仮にそうなった場合、受給開始年齢のさらなる引き上げに追い込まれるおそれが強うございます。
六。政府案による国庫負担の引き上げが実現いたしますと、税金のむだ遣いがふえてしまいます。なぜ年金に税金を投入するのかという点について、原点に立ち返った議論が必要でございます。
七。問題一と問題二の解決に当たって、政府割り当てを間違ってはいけません。問題二を解決するためには、スウェーデン流のみなし掛金建てへ切りかえるのが最善でございます。拠出した保険料は年をとったら必ず年金給付の形で返ってくる、そのような安心のできる仕組みをだれにもわかるような形でつくること、そういうことによって、制度への加入意欲を高めるのでございます。なお、その際、過去拠出分との区分経理が求められます。
八。問題一は、年金保険料を引き上げることの是非をどう判断するかによって解決の方法が違ってきます。他の代替的な手段との比較検討を十分になさった上で、解決方法を決めなくてはなりません。
九。また、給付の実質的な引き下げも、年金額の多寡にかかわらず一律に行うのか、あるいは高額の年金給付を受給している人に率先して譲ってもらうのかのいずれかによって、改正案の具体的な内容が異なってきます。
十。年金数理部局を厚生労働省から分離して、公正取引委員会や会計検査院のような中立かつ独立の機関とする必要がございます。タックスペイヤーの立場からしますと、与党の政府案づくりだけに協力する現行の仕組みは改めなければなりません。
ちなみに、アメリカ合衆国の年金数理部局は、与党ばかりでなく、野党や民間のシンクタンク、さらには大学の研究者に対しても公平かつ中立的に情報を提供しております。そのような仕組みが政策論議を中身の濃いものにしているのです。
十一。最後に、政治への期待を申し上げます。
信頼と安心の年金制度、それは、国民が究極的に政治家と政府をどこまで信頼することができるかにかかっております。政治家が第一に追求すべきものは国民の間にわき上がる信頼であり、名声である、これは故石橋湛山首相がおっしゃったお言葉でございます。
白虎のように天下をへいげいし、将来を冷徹な目でお見据えになってください。そして、知恵を広くお求めになり、あらゆる政策手段について想をお練りになってください。新しい政策展開によってどのような帰結がもたらされるのか、そのことについて想像力をたくましくなさってください。その上で、重い決断をなさっていただきたく存じます。
どうか審議を十分尽くしていただきたい。数の論理だけを優先し、強行採決を繰り返すというようなことはぜひとも避けていただきたく存じます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
○衛藤委員長 どうもありがとうございました。
次に、公文参考人にお願いいたします。
○公文参考人 公文でございます。
私は、主として、政府が提案をしております国民年金法等の一部改正案について意見を申し上げてみたいと思います。
今回の一部改正案は、結論から申し上げますと、今現在の国民生活を悪化させると同時に、将来の年金不安をますます拡大する結果を招くものであって、到底容認できるものではありません。
四月十九日に公表された朝日新聞の全国世論調査でも、年金改革を支持しないとした人が六七%に達しており、評価するとした人は二二%にすぎないと報道されています。これが、今次一部改正案に対する率直な国民世論ではないかと思います。
したがって、今次一部改正案は直ちに取り下げていただき、民主党案を初め、日本共産党、社民党その他から出されている年金改革政策、あるいは労働組合や各種関係団体の政策提言を含めて国民的議論を起こし、改めて多くの国民に納得の得られる改正法案として出し直すべきだと考えます。
今次一部改正案が多くの国民の不信を招いている問題点について、私なりに次の諸点を指摘してみたいと思います。
第一点は、既に限界に達している保険料を、国民年金では三〇%、厚生年金では三五%も引き上げるという負担増は、年金制度の空洞化を一層加速させ、制度崩壊を促進する結果を招くものでしかないと思います。
皆さん方も御承知のとおり、農漁民、自営業者の国民年金一号被保険者は、周知のように一人月一万三千三百円の保険料を払うことになっています。夫婦だったら二万六千六百円、二十歳以上の子供がいて三人で家業をやっている場合は、月四万円近いお金をとにかく二十五年間以上払わないと年金、老齢年金の受給資格がないという現行法のもとでは、大変大きな負担になっていることは今さら言うまでもありません。
そうした加入者、一号被保険者二千二百三十七万人のうち、国、自治体の基準に基づいて保険料を免除されている人が、御承知のとおり四百三十五万人に達しています。この四百三十五万人の免除者は、ぜひ今国会でも追及をして明らかにしていただきたいのですけれども、前年度は五百二十四万人だったものが、約百万人ぐらい減っています。お話によりますと、免除基準を厳しくして、申請免除者の申請を却下するという動きがあるように聞いておりますけれども、極めて重大な問題だと思っております。
このほか、やむなく滞納している人が政府の発表で三百二十七万人というふうに言われておりますけれども、これも極めて控え目な数字であって、単年度で見ると、実際の滞納者数は、保険料納入率六二・八%で推計すれば、六百六十万人になると思います。このほか、若い人たちを中心にした未加入者が六十三万人、合計すると約千百六十万人という人たちが国民年金の保険料を払えない、払わないという事態になっています。
政府自身が認めているように、滞納の理由の七一・四%は保険料が高くて支払うのが困難という経済的理由であり、生活苦の反映だと思います。残りの三割及び六十三万人の未加入者の理由は、公的年金への不信感からとしか考えられません。
空洞化は国民年金に限りません。厚生年金でも、決して許されないことではありますけれども、やはり四月十九日、朝日新聞の報道によりますと、新規法人の二割が未加入という実態が漏れてきています。倒産または倒産を偽装して、厚生年金から国民年金、国保へ移転するという動きが出てきているという空洞化の現実もあります。
このまま推移すれば、近代国家では考えられない大量の無年金者、生活できない多くの低年金者が間違いなく発生するという予感があります。こうした深刻な空洞化問題の解消なくして日本の年金制度の未来はあり得ないというふうに考えております。
このため、野党の皆さんや労働組合関係団体などから、基礎的部分を、保険方式ではなくて、全額国庫負担、税方式の最低保障年金制度に切りかえるべきだという政策提言がなされています。私は、全く正当な改革提言だと思うのですが、このこととあわせて、現在の百万人に達しようとしている無年金者、無年金障害者の救済も同時並行的に行うべきだと思います。
いずれにしても、この重要かつ多数派の意見となっている選択肢が、今次改正案では全く無視されているとしか考えようがありません。それどころか、差し押さえなどの強硬手段で空洞化解消の行政指導が昨年から実施され、それを合法化する改定が盛り込まれています。生活困難と根強い年金不信を問答無用の強権発動でねじ伏せるなど、到底許されることではないと思います。
第二の問題点は、現実を無視した年金額の一五%切り下げが法定されるということです。
約一千六百万人の国民年金老齢年金受給者の月当たり平均年金額は、御承知のとおり約五万一千円。このうち、国民年金、老齢基礎年金だけの受給者は約九百万人。この人たちの平均は四万六千円にすぎません。問題は、この月五万円以下の年金しか支給されていない人が約半数、八百万人もいるということです。
この水準は、憲法二十五条の基本理念に基づいてつくられている生活保護基準の半分以下です。この違憲レベルの水準を、マクロ経済スライドの採用などで二〇二二年までに一五%、最悪の場合は二五%削減するというのが今次改正案の趣旨だと思います。言語道断としか言いようがありません。
第三の問題点は、国会での審議無視、軽視の法改定を行おうとしていることであり、これはまさに民主主義の形骸化となるだろうと思います。
今次改定案では、従来の五年目ごとの財政再計算期という考え方をなくして、百年間とする財政均衡期間における見通しを作成し、これを公表すると変更することになっています。公表するだけで、五年目ごとに法案を提出し、国会で審議する必要がなくなるわけです。今次改定法が成立すれば、保険料値上げ、年金額切り下げが国会審議抜きで自動的に進行する。まさに民主主義の形骸化と言わざるを得ません。
第四の問題点が、十年前の一九九四年の国会で全与野党一致で決めた附帯決議、基礎年金の国庫負担割合二分の一への増額が、事実上今回も先送りされることになりました。しかも、五年後の二分の一への増額達成には、消費税増税を軸とした税制改革を条件としています。
逆進性そのものの消費税増税はもちろんのこと、これを人質、口実として年金改革に結びつけることなど、国民の意思に全く反するものであり、賛成できません。何よりも、年金など社会保障制度の基礎的な財源を消費税に求めること自体が間違っていると思います。国際的に見ても、最も逆進性の強い日本の消費税は、社会保障の大原則である応能負担の原則に反するものであります。大企業の優遇税制の是正、歳出配分の抜本的見直しで措置するのがまともな対応の仕方だと思います。
第五の問題点は、百年の財政均衡方式という考え方を採用しようとしていることです。
これは、事実上、土建国家型、金権腐敗の温床となっている積立金の非民主的運用を温存、継続するものであり、年金改革の理念に反するものであります。私は、こうした考え方を直ちに改め、高齢化社会のピークとなる四〇年から五〇年をめどに、段階的、計画的に取り崩し、民主的な運用機関のもとで活用するのが至当だと考えております。
百年の財政均衡方式では、厚生年金、国民年金の合計で、二〇五〇年には積立金が三百三十七兆円、現在の二・四倍です、そこまでふやす計画となっています。二一〇〇年になっても、現在の積立金総額に匹敵する百三十六・七兆円が残る計画です。ごまかし以外の何物でもないと思います。
以上、大きな問題点だけでも、今次改正法が、国民生活や高齢期保障にとって決定的なマイナスを押しつけるものであることは明白であるということを申し上げまして、私の意見を終わります。ありがとうございました。(拍手)
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